大学を休学していた時期です。
生まれつき発達特性が強く、睡眠障害や周囲の人とのコミュニケーションのズレに苦しんできました。特に高校に入学した頃が顕著で、からかわれたり仲間外れにされる事が多かったです。このような経験から、大多数の同期が受験する北大に入りたくないと思い、地元の札幌を出て東京工業大学に入学しました。
しかし、頭の良い人の多い環境に入ってもやはりズレが是正されることはありませんでした。発達特性がある事を認知したのもちょうどこの時期で、普通(所謂定型発達)に対して強い憧れを抱いた記憶があります。このような経験が積もり休学していた時期が一番精神的に辛い時期でした。実際のところは、今でも発達特性によるズレや疲れやすさが改善されたわけでは無かったりします。
休学をしていた頃に知り合った人との出会いです。
ウィーン帰りの声楽家の方で、歌う人間でありつつも音声学の研究に非常に長けた人でした。自分以上に発達特性が強い方ではあり、発達特性が持つ感覚過敏を非常に有効に活用していた方であったと記憶しています。その方の知り合いも、発達特性の偏りを持つ方が多く、ハンデを持ちながらも自分の道を模索して生きている方が多かったです。その出会いから、コミュニケーションの取り方が少し変わってきたのを実感しました。
自分は聴覚が過敏であり、音から様々な情報を得ているという事を自覚し、少しずつそれを利用できるようになっていきました。発達特性を持つ人間は環境と調和するか否かが大きく成功を左右するのですが、相手の声の特徴からそれを見分けられるようになっていきました。自分と調和できる人を見つけたこと、また、人の見つけ方に気付けたことが克服の一番の決め手になったと考えています。
昨今、発達特性に悩む人が増加傾向にあります。これは発達特性が周知され始めたことや、社会が求める立派な 人間に対する複雑さ、要求の高さが診断数を増やしているものと考えています(高齢出産の影響に関しても報告されていますね)。まずは自分の特性を正確に認知することが大事です。自分にとって心地の良いもの、不快なものを認知すること。またそれは改善可能なのかどうか。これを認知しておく事で状況がかなり整理されます。
それと、自分にとっての心地よい環境を見つけることですかね。正直これが一番難しく、偶然に左右される事も多いのですが、良い出会いがあればそれを逃さない事が重要かと思います。この辺りは人によって価値も万別のため余り良いアドバイスができていないかもしれません。
現在は新型センサの開発業務に携わっており、何をセンシングするか、という部分に興味をもっております。自分の経験故、今は脳の活動領域をウェアラブルデバイスでセンシングできるようにならないか、という事を考えています。発達特性も、脳が持つ未知の性質に対する理解に繋がるのではないか?と思っているわけです。センシングしたデータから発達特性、ないしは脳機能に対する理解が深まる事で発達特性を持つ人間でも救われるのではないか、なんて大それた事を考えています。
アイディアは色々あるのですが、まだまだ形にできていないような話ではありますが笑、自分の特性が生まれ持ったただのハンデにすることなく、何かに役に立ったと言える人生にしたいと考えています。