19〜20歳の時期は、私にとって人生で最も辛い時期でした。
私は中学時代、友人と訪れた東大の5月祭でその雰囲気に惹かれ、漠然と東大への憧れを抱きつつ、医学部進学にも興味を持っていました。高校受験では第1志望校に不合格となり、地元で進学実績が高い私立中高一貫校の医科系コースに進学しました。ここでは国立医学部を目指す人々が多く、私は特待生として学び始めました。駿台模試では上位0.1%の成績を維持し、特に英語では学年2〜4位と高い成績を収めましたが、数学には苦戦し、優秀な同級生に囲まれて成績の限界を感じていました。
高1の冬に超有名進学塾に通い始めたものの、相性を考えずに選んだため、課題の多さや自分に合わない学習スタイルに苦しみました。数学では進度が早く、高度な内容に追いつけず、精神的にも追い詰められました。その後、コロナ禍による休校で一時的に負担が軽減されたように思えましたが、塾や周囲の勉強量の多さに焦り、無理な勉強を続けた結果、自律神経を崩してしまいました。以降、原因不明の体調不良に悩まされ、診断がつかないまま病院を転々としました。
高2以降、学校に通えない日々が続き、高3の時点では入院するまでに体調が悪化しました。病気の影響でほぼ寝たきりの状態になり、認知機能が低下して文章を読むことすら困難になるなど、学習はおろか日常生活さえままならない状況でした。この頃には第1志望の大学を目指して勉強したいという気持ちが強い一方で、体調不良で受験が叶わず、孤独感や取り残されている感覚に苛まれていました。
勉強面でも、家で長時間机に向かい続けることがストレスとなり、1週間全く勉強できない時期もありました。この間、自己嫌悪や焦燥感に苦しみ、精神的にも追い詰められる日々が続きました。結果的に、現役の時も翌年も病状が悪化し、入試前に入院するという状況に陥りました。
こうした経験は今も私の心に深い影響を与えていますが、挫折の中で自分にとって本当に大切なことを見極める力を少しずつ身に付けられたのではないかと思っています。
きっかけとなったのは、昨年11月頃に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の存在を知ったことでした。それまで私立大学は視野に入れておらず、SFCの名前も「ビリギャル」で知っていた程度でしたが、実際に調べてみると自分に合う環境だと感じました。自由度が高く、自然豊かで落ち着いたキャンパスは、自分のペースで学べる環境を求めていた私にとって理想的でした。また、得意科目の英語と小論文の2科目で挑戦できる点も、認知機能の低下があった自分には現実的だと思えた理由です。
最初はICUも視野に入れていましたが、人文社会科学や総合教養といった形式が自分には合わず、文章を読む負担も大きかったため断念しました。一方で、SFCでは英語に苦労する時期もありましたが、小論文が得意だったことが大きな助けとなりました。特に、自分のアイディアや論理的な思考で評価される形式が、自分の強みに合っていました。
背景にある理由としては、周りに恵まれていたことと、学問に対する探求心が強かったことが挙げられます。まず、親や親しい人々が私の選択や人格を否定することなく、固定観念を押し付けることもありませんでした。親は比較的放任主義ではありましたが、困った時にはサポートを惜しまない柔軟で寛容な姿勢を持っており、私を子供としてではなく一人の人間として尊重してくれました。これにより、自分の選択に自信を持つことができたのだと思います。
また、学問に対する興味が大きな支えとなりました。受験勉強でも「なぜこうなるのか?」と深く考えることが多く、単なる暗記や問題演習だけでは満足できませんでした。研究を通じて既知と未知の境界を広げることに惹かれており、大学は学問を追求する場であるという信念がブレなかったことが、自分の選択を支えました。その結果、長年こだわっていた大学から方向転換し、新たな道を選ぶことができたのだと思います。
このように、周囲の支えや自分の学問に対する興味が、困難を乗り越える大きな原動力となりました。
多くの人が「自分は周りと違う」「レールから外れている」と感じて悩むことがあると思います。生きることをやめたいと思う人も少なくないでしょうし、その気持ちは私もよくわかります。実際、今でもそう感じることがあるくらいですし、それを無理に否定したり、払拭するべきだと言うつもりはありません。ただ、生きることを諦めるのは想像以上に難しいものです。だからこそ、少しでも楽に生きるために、自分を必要以上に追い詰めないでほしいと思います。「こうじゃないといけない」という考えに縛られる必要はないのです。
私自身、高校生の頃に思い描いていた未来とは全く違う道を歩んでいますが、それでも意外とやっていけているし、そこで得た学びもたくさんあります。人それぞれに違う生き方があるので、「こうじゃないと」と思い込んでいたことが、必ずしも正解とは限りません。むしろ、辛い経験やどん底を味わったからこそ、当たり前のように思える小さな幸せを実感できるようになります。例えば、健康でいられること、ご飯を食べられること、家族がいることなど、日常の中にたくさんの幸せがあるのです。そんな当たり前を大切にしつつ、自分を責めすぎずにいてほしいと思います。
また、何かがうまくいかなくても、必ず別の道があります。人生には「これがダメならこっちがある」と思える選択肢を増やすことが大切です。そして、人生で起きることには必ず「意味」があると思います。それはその時すぐに分かるものではなく、後から点と点がつながってようやく理解できるものかもしれません。辛い出来事や希望が叶わなかった経験も、別の形で得られるものが必ずあると信じています。
最後に、もし興味があれば「心理学的決定論」という本を読んでみてください。人生の出来事をどう捉え直すか、そのヒントになるかもしれません。
長期的には、メンタルヘルスの問題をITやAIで改善する仕組みを作りたいと考えています。現在の精神科医療は薬物中心ですが、明確なバイオマーカーがないため個人差が大きいのが課題です。そこで、運動療法や音楽療法など、一人一人に合ったプログラムをオンラインでコーチング付きで提供できる仕組みを構想しています。その効果やメカニズムを神経科学的に定量化する研究を計画しており、長期目標実現のための基盤を整えたいと考えています。また、AIを活用した認知行動療法やカウンセリングを提供するアプリやサービスの開発、さらには起業も視野に入れています。これは主に軽中度や寛解中の方を対象とするものです。
短・中期的には、長期目標を実現するためのスキルや経験を積むことに集中しています。プログラミングの学習やインターン活動を通じて、ITやコンサル、マーケティングの実務経験を積みながら、自分のやりたいことにつながるスキルを磨いています。さらに、メンタルヘルスや神経科学の最先端に触れるため、米国への交換留学を目指してTOEFLやIELTSに挑戦し、英語力向上にも力を入れています。こうした取り組みが、目標に向けて少しずつ前進している実感につながっています。