人生の中で最も辛かった時期は、個人事業の廃業後に就職した会社を退職し、現在の会社に就職が決まるまでの約1年間です。
私は新卒から約15年間、公務員として勤めていました。公務員時代に興味を持ったテーマである「社会的課題の解決」を本格的に取り組みたいと考え、37歳で退職し、個人事業を立ち上げました。具体的には、遊休ストックを活用して、街の価値向上を図るためのスペース運営に取り組んでいました。自分のやりたかった事業を実現できたものの、安定した収入を得ることができず、結果的に廃業となりました。
その後は、実家の両親の援助を受けながら社労士試験の勉強に専念しました。満を持して受験したものの、合格点に1点届かず不合格。その後の就職活動もうまくいかず、「自分の存在価値とは何か」「自分にできることは何か」と自問自答する日々を過ごしました。この時期は貯金も社会的信用も徐々に失っていく実感があり、これからの人生をどう歩んでいけばよいのかを真剣に悩みました。
個人事業を始める前は、約15年間公務員として安定した生活を送っていたため、お金に困る経験がありませんでした。そのため、経済的に困窮することがこれほど辛いものだと痛感しました。趣味だったギターも弾く気になれず、旅行にも行けず、精神的にも非常に不安定な日々が続きました。
その時期を乗り越えられたきっかけは、当時付き合っていた現在の妻の存在や両親の援助に加え、自分がやりたかった個人事業を、曲がりなりにも実践できたという達成感があったことです。また、個人事業の廃業後に就職した企業がハードな職場だったため、「人生を一から再構築するしかない」と開き直ることができたこと、そして現在勤める会社に就職できたことも大きな要因です。
仕事があり、安定した収入を得られることの尊さを改めて実感し、社会に自分の居場所がまだあると感じられたことで、もう一度人生をやり直すことができていると思います。また、「失敗してもやり直せばいい」とある種ポジティブに考えられた(ポジティブにならざるを得なかった)のは、身近な人たちが私を信じて見捨てず支えてくれたおかげだと感謝しています。他にも、青空や夕日、道端の草花の美しさを再発見できたり、ラジオを聴いてリラックスする時間を持てたりしたことも、意外と重要なきっかけだったのかもしれません。
昨今、「リスキリング」や「やりたいことを仕事に!」といったフレーズを目にする機会が増え、転職やフリーランスへの道を後押しするような広告や社会の空気感を感じています。もちろん、この流れ自体を否定するつもりはありません。しかし、今振り返ってみると、収入や社会的信用のある職場を退職してまで「やりたいこと」に挑戦したことは、私の場合、得るもの以上に失うものが多かったように思います。
そのため、個人事業やマイプロジェクトに取り組む際は、副業やプライベートの時間を活用する方がリスクを抑えられ、自分のペースで楽しく、長く続けられると感じています。会社を退職して収入源を失うと、好きで始めたマイプロジェクトで生活費を稼ぐ必要に迫られ、結果的に精神的な負担が増すことがあります。
このような挑戦を否定するつもりは決してありませんが、独立を考える際には、事業計画や収支の見通しを立てた上で行動し、気持ちだけ先走って退職することは避けた方が良いのではないかと、私自身の経験を通して強く感じました。
現在勤めている会社で与えられた仕事に邁進しつつ、家族や友人など人とのつながりを大切にし、自分自身が心身ともに健康でいることをモットーに、公私ともに充実した生活を送っていきたいと考えています。特に、現在勤めている会社では、これまで私が興味を持ち続けてきた仕事に携わることができており、忙しいながらも充実感を持って楽しく働かせていただいています。
また、仕事を軸に妻との暮らしや友人との関係も大事にしながら、今後のキャリアを見据え、社労士と宅建の資格取得を目指しています。定年後も働き続けられるようにするため、数年以内の合格を目標に、これからも努力を重ねていきたいと思います。