予定日よりも3か月以上早く出産し、息子が1kg未満で産まれてきたときです。
息子は超低出生体重児(※)としてリスクの高い状態で産まれ、0歳児の小さな体で度重なる入院や様々な手術を経験させることになってしまったのですが、息子が今後しっかり成長できるのか不安でしたし、早産になったのは自分のせいではないかと責任を感じていました。また、出産後9か月間は、1日8~10 回、2~3時間おきに、準備や消毒も含め1回1~2時間ほどかけて搾乳を継続していたので、出産後は1日あたり最長でも合計1~2時間しか寝ることのできない日が9か月ずっと続き、心身共に疲弊していました。 息子のように小さく産まれた子は免疫力が弱いということで、少しでも免疫力を高めたいという思いから、私は自分の身体を酷使してでも搾乳を継続して母乳をあげることにこだわってしまっていたんです。そうなると、息子がNICUに入院している最中は面会にも行っていたし、退院してからは通常の授乳やおむつ交換等のお世話も同時にしなければならないので、自分の食事や睡眠どころじゃなかったんですよね。 無理がたたったのか、息子のNICU入院中には私自身も重篤な肺炎を発症し、しばらく入院してしまいました。
さらに、NICU退院後は、もともと予約していた産後ケア施設なども、医療的ケアが必要な子は預かることができないとのことで全てキャンセルになってしまい、助けを求められる先がないという孤独感を感じていました。医療的ケアが必要なくなるまでは保育園等の集団生活も難しいと言われ、職場復帰の計画が大幅に遅れてしまったことも予想外でした。もともと人とのコミュニケーションを重視していた私にとっては、忙しくてメールやLINEなど未読件数が数千件溜まっている状態も、大きなストレスとなっていました。
(※)出生時の体重が1,000g未満の赤ちゃんのこと。未熟な臓器機能により、呼吸や感染症などのリスクが高く、成長には長期的なケアが必要とされます。
一番は、息子の順調な成長です。
お腹の中の方がNICUの保育器よりも成長に適した環境とのことで、早く産まれた子は成長がゆっくりになると聞いていました。しかし、息子の場合は、本来の出産予定日の時点で平均的な赤ちゃんの出生体重まで成長し、生後5か月(本来の出産予定日から2か月)の時点で、生後5か月の赤ちゃんの平均的なサイズまで追いついてくれました。そのため、「息子がこれだけ頑張って成長してくれているんだから、私も息子の成長のサポートができるように頑張ろう」という気持ちにさせてくれました。
もう一つのきっかけは、酸素ボンベのサポートが必要なくなり、保育施設を使えるようになったことです。育児だけの世界から抜け出し、「息子の母」としてだけでなく、私自身の名前で社会と関わる時間を持てたことが大きかったです。特に、職場復帰してからは物理的に家庭を離れる時間が増え、また収入も入るようになったため、夫にも育児を分担してもらえるようになり、孤独感が軽減しました。会社では、息子の通院や体調に合わせてリモートワークの日を作ったり、遅刻・早退したりすることもありますが、柔軟な働き方ができるのも助かっています。
私が最も伝えたいのは、まず同じく早産で産まれた子を持つママ・パパに向けて「ゆっくりだとしても子供は着実に育つ」ということと、全てのママ・パパに向けて「手を抜けるところでは抜いて、自分自身のことも大事にしてほしい」ということ。また、その他の方々に向けて「子育て中の方に対して寛容であってほしい」ということ。
もし小さく生まれたとしても、子供の生命力は驚くほど強いですし、ゆっくりだったとしてもしっかり着実に成長し続けてくれます。私も早産になったことについて責任を感じて気に病んでしまっていましたが、今考えれば、過度に心配するのではなく、子供を信じて見守ることが大切だなあと思います。また、産後はママ・パパが無理をして体を壊してしまっては元も子もありません。私はつい母乳育児にこだわって無茶な生活をしてしまいましたが、ママ・パパが少しでも長く睡眠をとり、心身共に健康な状態で子供と関わるのが何よりも大事だと感じます。粉ミルクなどの既製品のクオリティも上がっていると聞きますし、もっと気楽に考えてもよかったのかもしれないな…と。私も、息子の成長に伴って少しずつ自分自身のケアを考えるようになり、本来の出産予定日から数えて6か月になってからは完全ミルクに切り替え、離乳食に関しては生協の冷凍食品とレトルトを多用するようになりました。
また、子育てをしている中で孤独を感じることがあるかもしれません。そんな時は自分の両親やベビーシッター、託児所など、頼れる先をぜひ探してみてください。預けられる先が見つかったら、一度育児を離れて社会に触れる時間を作ると世界が変わると思います。私の場合も、子供を預けて職場に復帰したことをきっかけに心身共に復活しまし た。子供と離れている時間が長いからこそ、一緒にいるときは常に笑顔で接することができているような気がします。新卒の頃から仕事で忙しい日々を過ごしてきた身からしても、子育てというのはそれ以上に大変な大仕事だと感じます。子育て中のママ・パパの周りにいる方々も、ぜひ寛容な気持ちでサポートしていただけるような社会になったら嬉しいです。
今後の展望として、私は子育てだけでなく、介護や自身の病気など、さまざまな事情を抱えながらでも働きやすい社会を実現したいと考えています。現在、私は家族のお金管理やタスク管理を効率化するサービスを提供するファミリーテック株式会社で働いています。この仕事を通じて、家族の在り方や暮らし方をより良いものへとアップデートしていきたいと思っています。また、医療アクセスや情報へのアクセスなどにおいて、都心部と地方の格差などを感じることがあります。将来的には、そういった様々な格差を解消していきたいと考えています。