人生の中で最も辛かった時期は二度目の大学受験期です。
まず、私が医学部を受験しようと思った経緯について話します。そもそも私は中央大学商学部を卒業後、地元の金融機関に入社し、住宅ローン関係の営業職として働いていました。日々の業務に忙殺される中でふと「自分がしたかったことってなんだっけ?」と思うことがありました。そして、当時住宅ローンの契約手続きをしていた顧客が重い病を抱えていることが判明しました。住宅ローンは大きな借金を背負うことになるので万が一の際に備えて通常は生命保険に入ってもらうのですが、その病が原因で生命保険に入れず、住宅ローンを契約することができませんでした。ローンを組めず残念そうな顔をしながら帰っていく顧客の姿を見て、金融サービスを通して人々の生活を豊かにする手助けをしたくて金融機関に入社にしたのに結局健康でなければお金を貸すことができないのかと自分の無力さを感じました。また、当時見ていたナイトドクターというドラマや小学生の時、将来医師になりたかったのに目指すことなく諦めた過去の想起から医師への憧れが強くなったこともあり、人々の健康の維持や命を救うことのできる医師こそが私にとっての人々の生活を豊かにする手助けなのではないかと思い、会社をやめて予備校に入り医学部受験に専念することを決意しました。
勉強を始めるにあたっていくつかの予備校に入塾や受験に関する相談をしていた際、とある塾の校舎長から東大や京大でも理系出身でもなく前回の受験からブランクもかなりあるからどう考えても医学部合格は無理だよと言われました。その言葉に火が付いた私は、絶対に合格してやるという強い気持ちで勉強を始めました。そうは言ったものの二度目の大学受験とはいえ、数Ⅲ、物理、化学は初学であるし、英単語や文系範囲の数学の内容もほとんど忘れているという悲惨な状況でした。それに加えて、周りの同級生のほとんどは社会人として働いているのに自分は会社をやめて予備校生として生きているという疎外感もありました。さらに、勉強していても成績が伸び悩む時期もあり、精神的にかなりしんどかったです。そんな状況でも2年間毎日必死に勉強したことで3校から最終合格をいただき、現在はそのうちのとある私立大学医学部に通っています。
どんなに苦しくて辛いときでもあきらめなかったのには私にとって2つの要因がありました。
1つ目は退路を断っていたことです。社会人となってから医学部合格を目指す場合、たとえ不合格になっても同じ立場でいられるよう社会人として働きながら勉強することが多いです。ですがその場合だと勉強時間の確保が難しく、初学の科目が多い私には無理だと思ったのと私の性格的にもし不合格になっても同じ会社にいられるからと勉強に対して本気で取り組まない可能性があると思いました。そのため退路を断つことで勉強だけに集中し、合格しなければ人生終了という過酷な環境をあえて整えました。
2つ目は大谷翔平選手の存在です。実は私は大谷翔平選手と同い年です。そのためある意味で近い存在として誰もが認めるスーパースターの活躍を定期的にチェックしていました。常識的には不可能だと思うようなことを次々と成し遂げる彼から刺激を受けないはずがありません。私立大学文系学部出身で約10年ぶりに大学受験をして医学部に合格することはほとんどの人は無理だと思ったでしょう。しかし、世界で戦う大谷選手のプレーを見てきっと自分にもできると自分自身を鼓舞していました。
高校や大学を卒業したら会社に就職して社会人として働く。一般的にはこれが普通とされる生き方なのかもしれません。しかし、この生き方があなたにとっての正解とは限りません。人生は一度きりしかないし、人の数だけ生き方があるからこそ自分のやりたいことをやって後悔のない人生を送ることが大切だと思います。そのためには時には回り道をすることや周囲の人と違う選択をして別の道を歩むことも必要かもしれません。その選択がどれほど過酷で誰も成し遂げたことがないことだとしても最後まで自分の可能性を信じ続けてください。意思のあるところにしか道は開けないし、前例がなければあなたが最初の成功例になって同じ道を志す人の道標になってください。また、たとえ結果的に失敗に終わったとしてもやってよかったと前向きに思えるよう一度やると決めたら全力で取り組むことも大切だと思います。
まずは留年することなく大学を卒業し、医師になることを目標としています。その後については明確には定まっていないものの「〇〇先生に診てもらえてよかった」と患者本人やご家族に思ってもらえるような医師になりたいです。同じ病気でも痛みの感じ方や症状の強さは人それぞれであるし、それは患者本人にしかわかりません。そのため、どんな患者に対しても「患者の一人ではなく、一人の患者」として対応し、その患者になったつもりで痛みや症状を理解しようとする姿勢を見せることにより患者本人やご家族との信頼関係を築いていきたいです。